第01回 - 09年度秋学期

イントロダクション

09年度からこの科目のタイトルが「アカデミックリテラシー」と変更になっています。
実質いくつか項目が追加されていますが、基本的な内容は前年度以前と同様です(年々マイナーチェンジはしています)。興味のある方は前年度以前も授業前に読んでおくと良いでしょう。

この授業の目標

この授業では、

  • 他人と情報のやり取り(コミュニケーション)をするスキルを身につける
  • 必要な場面で必要な情報を相手に伝えることができるようになる

という二点を中心として講義を進めます。また講義を進める中で、現在ホットなネットワーク系サービスや、入門となる参考資料を紹介します。進展の速度が早い現在のITトレンドを把握すると同時に、それらの中心となるサービスを体験することは、皆さんの今後の学生生活にも革新をもたらす可能性があるでしょう。また今後の知的活動の一助になるかもしれないと期待しています。

授業を通じて習得すべき内容

皆さんがこの授業で習得することが期待されている点は、以下の通りです。

  • 必要な情報の集めかた
  • 集めた情報の整理のしかた
  • 相手への伝えかた

この三点は最低限この授業を通じて身につけていただきたい情報リテラシーとなります。最低限この三点とはいっても、これらの目標は複数の下位構造から成立しています。それぞれの下位構造については、講義の中で追々説明していくことになります。例えば、「相手への伝え方」という点については、

  • 自分の持っている情報を全て伝えることはできない
  • 相手の状況を考慮に入れないと伝わらない
  • 伝達手段には様々なものがあるので、何を選ぶかが大事

というような前提があります。そして伝達しようとする者であれば、これらの条件を当然のこととして実際に伝達をおこなう必要がある訳です。この授業ではこのような点について実習を重ねながら体得することを目標としていく訳です。

授業の進め方

授業の進め方ですが、基本的には実習中心でおこないます。実際に作業をおこない、自分で考えることによって、初めてさまざまなリテラシーが身に付くと考えています。つまり、実際に手を動かし、調べものをし、資料をまとめ、発表をおこなう、という作業が必須となります。

ではまず出席についてですが、こちらは取りません。建前としては、出たい人だけ出ればよろしい。ただし、毎回のように課題が出ますから、休まない方がスムーズに人生を送れることは確かです。あと例外的にプレゼンテーションの実習の時は欠席しないでください。これは先に言っておきます。

さて、実習中心の講義ではありますが、アカデミックリテラシー科目では期末に試験を受けることが必須となっているようです。
しかし、その試験のみで評価を行うわけではありません。みなさんの成績は期末の試験と、授業の目標を達成できているかの評価によって決まります。

それでは課題について説明します。この講義では、全ての課題を提出することが前提になります。つまり、一つでも出してない場合には、その者は評価不能ということで、単位は「不可」となります。とにかく判断する材料を提出しない、できないのですから、これは仕方ありませんね。皆さん頑張って途中でもいいから課題は提出しましょう。出さないよりよっぽどマシです。

皆さんが次に気にするのは、課題の回数は何回だろう? っていうことでしょうね。できるだけ楽に単位は欲しい、でもワンチャンス一発で成績が決まってしまうのは避けたい、というのが人情ですね。

  • 大きな課題は二つ。これでおよそ半分の点数が決まります
  • 小さな課題は進行状態によって出します
  • 提出が遅れた場合の点数は大幅に減点されます

授業の進行のまとめ

  1. 出席は取りません。
  2. 失敗を取り返せるチャンスは多い方が良いでしょうから、課題を沢山出します。
  3. 課題が全部出ていないと「不可」になります。
  4. 適切に課題がこなせていれば単位を与えます。
  5. 期末には共通試験があります。

ここまでいいですか? 何か問題がある場合は、挙手の上意見を述べて下さい。ちゃんと説得できたら考慮することにします。

この授業でのルール

堅苦しい話になりますが、この授業でのルールをいくつか決めたいと思います。当然のことながら授業を受ける場合、講義を受ける場合の常識と思ってもいいでしょうが、とりあえず列挙します。

  • 他人(講師、他の受講生)に迷惑をかけない
    • 遅刻をしない(電車の遅延など、やむをえない場合は自分の判断)
    • 無駄な音を発しない
      • 携帯電話が着信した場合は、講師が出ます
      • 寝息、いびきをかかない

この授業では講師は携帯電話を教室に持ち込まないようにしていますが、緊急の連絡などの場合もありますので、皆さんが携帯電話の電源を切ることを強要するものではありません。しかし、緊急の場合ならば、なおさら講師が出る方がいいですよね。この授業中に教室で携帯電話が鳴った場合には、講師が出ますのでよろしくお願いします。

  • 不正をしない
    • 他人の課題を真似る(同じはずがない)
    • 説明したことを後から聞きに来る(≠質問をしない)

実習を中心とした授業ですから、皆さんから提出していただく課題も実習の成果になります。そしてそれらの課題は、各人が異なったものになるように設定します(今後説明します)。従って、他人の課題をそっくり真似ても意味がありません。皆さんの間で相談することは、大いに結構ですし、推奨しますが、オリジナリティを損なわないように各人が気をつけて下さい。また、説明は大事なことであれば授業中に繰り返し説明しますので、「聞いていない」とのは自己責任ということになります。ただし、質問は歓迎します。

  • 講義は週ごとの積み重ねで進行します
    • 遅刻欠席した場合には、その週のうちに自習しておいてください
    • 授業の内容はこのブログ上に掲示してありますので、必ず追いついておいてください。

まず、当然のことだとは思いますが、遅刻欠席した数名のために復習の時間を取ることはできません。基本的に講義の資料等はネットワークを通じて公開します。逆にいえば、いつでも授業を復習することは可能な訳ですから、資料等を見ていないことを、課題の締め切り超過の理由にはできません。

講師への質問に関して

講師への質問はメールを送って下さっても結構です。ただし、質問をおこなう場合には以下の点に注意して下さい。

  • 最初に必ず名乗る
  • 質問する場合には、質問内容を可能な限り具体的に記す
  • くだらない質問、ちょっと調べれば済むと考えられる質問は、無視される

また、得られた質問は講義録に転載する可能性がありますので、こちらについてもご了承ください。

授業の流れ

長々と説明しましたが、半期の間の授業の流れを簡単に説明します。

電子メールのマナー(メーリングリストも含む)

まず、電子メールに関しての考察をおこないます。電子メールの特徴は、特に一対一のコミュニケーションに使われるツールだという点です。またメーリングリストというツールに関しても解説をおこないますが、この場合も、受信者は限られた範囲に限られるという意味では共通していると思われます。また、皆さんは携帯電話のメール機能を使って、友人や知人とコミュニケーションを行っていると思いますが、この携帯電話のメール機能、いわゆる携帯メールと、コンピュータ上で扱われる伝統的なメールとの比較もおこないます。さらにメールを支えているインターネット上の仕組みについても説明をおこないます。

情報の収集と整理

メールに続いて、情報の発信を巡る話題です。そもそも情報を発信しようとする場合、発信しようとする情報の中身がないと始まらない訳です。何も手元に発信すべき情報を持たない者が、情報を発信できるはずが無いのです。そこで、発信するにふさわしい情報を作り上げるための技術を身につけることにしましょう。一言でいえば情報を収集するための手法を身につけることがこのステージの目的です。具体的には、書籍による情報検索の仕方とWebを用いた情報検索の仕方に関して説明をおこないます。また、書籍やWebを通じて得た情報をどのようにまとめていくか、という話題も扱います。

特定少数(クラス内)に対する情報発信

続いて、具体的に情報を発信する段階に移ります。この授業を受講している皆さんの間での情報発信が次のステージです。ここでは一人一人に口頭発表をおこなってもらいます。この授業の受講者に向けて情報を発信するということは、情報を受信する者の環境やレベルを知っている状況ですから、発表自体はそう難しいものではないでしょう。しかし、数十名という人数に対してきちんと自分の調べた内容を発表し、質問を受けるということは、皆さんの今後にとって必ずや良い経験となるでしょう。このステージでは、発表用資料の作成のために、Microsoft社のPowerPointを利用します。

不特定多数(世界中)への情報発信

そして最終段階として、XHTMLを利用したWebページの構築という課題をこなしてもらいます。言い換えるならば、インターネット上に広く公開するドキュメントを作成するという課題です。この場合、受信者の環境やレベルは様々であり、特定少数(クラス内)に対する情報発信と異なり、口頭表現や身振り手振りを用いることができません。文字や画像等の情報のみで、伝えたいことを全て表現するという必要があります。さらに、世界中に対して公開する、という場合には、引用した資料の扱いについても細心な注意を払わねばなりません。著作権をはじめとした知的所有権に関しても、実践的な知識を持つことが必要とされる課題です。


さて、ここまでが授業をおこなう前の約束ごとの伝達と、いくつかの事務的な連絡作業でした。それでは早速第一回目の講義に入ろうと思います。

余りにも基本的な確認事項

皆さんは既にコンピュータを利用したことがある人がほとんどだと思います。またそのうちほとんどの人が、インターネットを利用して様々な情報を入手したり、メールで知人や友人とコミュニケーションを行っていることでしょう。そんな方々に向かって、こんな説明をするのは失礼かと思いますが、まずコンピュータの構成について、ざっと説明します。こちらは参考書の1章を見てください。

ハードウェア
  • 本体・モニタ・キーボード・マウス
ソフトウェア
  • OS(オペレーティング・システム)

スタンドアロンとネットワーク

続いてネットワークについての内容です。こちらは第2章を参照してください。
コンピュータがただ単体で動作している環境を「スタンドアロン」といいます。スタンドアロンなコンピュータに出来ることも様々ありますが、コンピュータ同士がネットワークを組み、またそれらのネットワークがさらにネットワークを組んでいる状態、それをインターネットと呼びます。そして現在は、ますます「コンピューティング≒ネットワーキング」という時代になってきています。コンピュータを利用するということは、イコール、ネットワークを利用することという時代なのです。このような時代になっている以上、スタンドアロンでコンピュータを扱っていた時代とは異なったリテラシーが必要になることは、言うまでもないでしょう。目の前のコンピュータは、世界中へ接続しているという状態は、極端にいえば、「目の前のコンピュータの先には人間がいる」ということであり、その相手は、現実の人間がそうであるのと同じように様々であり、善人もいれば悪人もいるという状態です。このようなネットワーク下における人間同士の関係性に気を配るのは当然として、また一方でネットワークとは、目に見えるコンピュータの挙動の裏で、様々なものが動いており、利用者が気にすることなくサービスを受けることができる環境が整えられていることを自覚することも大切なリテラシーになります。いわゆる「サーバ」という存在によってサービスがおこなわれているという点に自覚的であることは、現在のネットワークユーザにとって大事な視点です。

認証とパスワード

ネットワークを正規利用するためには、認証とパスワードという手段が用いられます。

最近、パスワードを変更していない人はパスワードを変更するなどの手続きを各自行ってください。



ネットワークサービス基礎

毎回の講義ごとに現代のITトレンドとなる各種ネットワークサービスを紹介します。また読んでおくと様々な面で役に立つと考えられるWebサービスやBlogについても紹介したいと思います。余裕があればそれぞれのサービスを体験してみると良いでしょう。


ソーシャルネットワーキングサイトと学習に関する相互サポート

  • なぜ授業にSNSを利用するのか?


現在、日本でソーシャルネットワーキングサイトと呼ばれるサービスはソーシャル・ネットワーキング サービス [mixi(ミクシィ)]をはじめとしていくつかあります。すでに利用している方も多いでしょう。SNSは閉じたネットワーク空間で、人間と人間を結びつけ、そこで生まれるコミュニケーションを楽しむというサービスであると考えられます。この「人間と人間を結びつける」という部分に注目し、授業に関する相互サポートに期待していると考えて下さい。

SNSに関係するデータについては、総務省の調査結果を挙げておきます。

総務省|掲載期間終了につき転送します。

また、少し古い資料ですが、ITmediaでは、SNSに期待されている点は、以下のようにまとめられています。

「SNSでITリテラシー底上げを」――総務省研究会 - ITmedia NEWS

この「ITリテラシー底上げ」はこの授業に用いられるSNSでも注目しているところです。

ただし、一方で巨大化し、消費されていくSNSに対してはこのような意見もあることを忘れてはならないでしょう。

Webdog - Online


参考文献

講義の全体を通じて、またその会回の講義の参考となるであろう様々な書籍を紹介します。もちろん読むか読まないかは皆さんにお任せします。しかし、ネットワークサービスだけでなく、様々な基本的教養を身につけるのに役立つと思われる書籍を紹介しますので、講義の期間だけではなく、後で時間が取れた時にでも思い出して手に取ってみると良いと思います。

ウェブ進化論 本当の大変化はこれから始まる

ちょっと古い内容になってしまいましたが、もしもあなたが「Web2.0」というキーワードを聞いたことがあり、「それって何のことだろう」と漠然と思っているなら、その入門書としてこの書籍をお勧めします。

ウェブ進化論 本当の大変化はこれから始まる (ちくま新書)

ウェブ進化論 本当の大変化はこれから始まる (ちくま新書)

すでに「Web2.0」の流れを追いかけている人にとっては、自明のことばかりかもしれませんが、最近の Web の動向を知るためには良いでしょう。少なくとも現実の生活の中に Web というツールが入り込み、既存の社会的な枠組みが少しずつ変化しているということを知っておくべきでしょう。

現在進行形で行われつつある「革命」の最中に生きる者にとって、今起こっていることについて「さわり」でも知っておくことは、必要な教養だと考えられます。

さらに噛み砕いた書籍としては、「グーグル」という書籍もあります。こちらも余力があれば読んでおくと良いかもしれません。

グーグル―Google 既存のビジネスを破壊する  文春新書 (501)

グーグル―Google 既存のビジネスを破壊する 文春新書 (501)

また、ネットにはニュースサイトというようなサイトも多くあり、そこにはコラムも掲示されている場合が多く、中でも最新のネット情報などに対する有力な情報源となる記名記事なども存在します。これらのサイトはリアルにおける雑誌のような位置づけにあり、興味のある内容をチェックしておくと、時代の流れを掴むことができるようになるかもしれません。例えば以下のようなサイトがそれにあたります。



課題1:授業中の残り時間で、講師にメールを送る。
  • 送り先はyasunari@aoni.waseda.jp。
  • アンケート
    • 以下の単語を説明できるかどうか、Y/Nで回答しなさい。
  1. RSS
  2. YouTube
  3. Gmail
  4. Twitter
  5. Delicious
  6. Skype
  7. IMAP4
  8. Wiki
  9. OpenOffice.org
  10. iTunes Store
  • 自己紹介
    • 自己紹介を手短に書いてください。
課題2:講師宛に自己紹介の手紙を書く

来週の授業までに実施し、持参してください。

  • 内容は自己紹介
  • 媒体は封書に限る
  • 送り先は早稲田大学メディアネットワークセンターの佐々木康成宛とする。
  • 住所は自分で調べること(ヒント:PCネットワーク利用ガイドの奥付)。
  • すぐに出せる状態で来週持参すること。送ってはならない。