第02回 - 07年度春学期
手紙とメールの仕組みとマナーについて
メールの作法……の前に手紙の作法
きちんとしたメールを送る、ということは、コンピュータを介したコミュニケーションの基本です。前回の課題として、講師に手紙を送る、というものを用意しました。ここに本日午前中までに届いた、このクラス分の手紙があります。さて、何通かの手紙を拝見しまして、いくつか指摘しないといけない部分がありましたので、そちらをまず説明します。
手紙をしたためる、ということは一つの文化です。皆さんも、共同体(ここでは日本文化という共同体)に属している訳です。で、何かしら活動を行う時に、その所属している文化を無視してしまうと、「文化に沿っていない人」とか「文化を無視する人」という印象を持たれてしまいます。もっと簡単にいうと「教養の無い人」、「空気の読めない人」、「常識はずれの人」というネガティブな印象を受けてしまう訳です。残念ながら、文化なんて古い空気はうざったい、従う義理なんてない、と思ったとしても、世間の大多数の人はその文化に所属していますので、抵抗したところで不利益を受けるのは少数派と、そういうしくみになっているのです。
面倒臭い話になる前に、手紙の話に戻します。まずは手紙は、大きく分けて二つに分類されます。
- 封書
- はがき
の二種類です。通常、あらたまった内容であれば、封書で出すことが正式です。目上の人に対しては封書で出しておいた方が無難です。はがきは略式のものであると考えておいて良いでしょう。ただし、年賀状や暑中見舞い、季節の挨拶状においては一般的にはがきを用います。反れ以外の場合は封書の方が無難だといえます。
手紙の基本構成
手紙は、前文、主文、末文、後付からなっています。それぞれはまた、下位の構成要素から成立しています。ちょっと見てみましょう。
- 前文
- 頭語
- 時候の挨拶
- 安否の挨拶
- 主文
- 起辞(起こし言葉)
- 本文
- 末文
- 結びの挨拶
- 結語
- 後付
- 日付
- 署名
- 宛名
- 副文
- 添え書き、追伸
はがきの場合は、以下の通りです。
- 前文
- 主文
- 末文
封書で送る場合の宛先にも注意して下さい。
△△係御中○○様
と書いた人が多いのですが、今回の課題の場合には、
△△係気付○○様
と書かねばなりません。実際には、「気付」と「御中」と「様方」の3種類があり、使い分けをする必要があります。
- 気付:郵便物を、相手方の住所ではなく、相手の立ち寄り先や関係のある場所あてに送る時、あて先の下に書く語。
- 御中:郵便物で、会社・団体など個人名以外のあて名の下に添える語。
- 様方:送り先の住所の世帯主が、送りたい人と違う場合に用いる。
手紙の書き方で参考となるWebページ
よくまとまっています。ここでほとんどの情報は揃いますが、外にもいくつも情報源があります。各自調べてみると良いでしょう。以下にリンクを置いておきます。
- http://itp.ne.jp/contents/business/tool/business.html
- http://www2.maruni.co.jp/life/top.html
- http://www.ausalonvert.com/life/atena2/
- http://zexy.net/newlife/comm/mnl/bun_f01.html
- http://zexy.net/newlife/manual/money_comm/bun_e01.html
その他、日本郵政公社による、ゆうびんホームページには、http://www.post.yusei.go.jp/navi/というサービスもあるようです。
手紙とメールの作法の違い
さて、みなさん、手紙とはがきを書けるようになったと思います(少なくとも就職活動を始める前には、そのスキルを身につけておいて下さい)。メールでは封書と同等の情報を全て記述する必要はありません。特に、封書で用いられる時候の挨拶は省略される傾向にあります。
しかし、手紙を源泉とした文化が息づいているのは確かです。はがきの方が文面からすると近いかもしれませんね。メールの書き方の作法については、後に回すとして、次にみなさんが日常的に使用している、ケータイのメールについて少し考察してみましょう。
ケータイ文化圏のメールとPCのメール文化圏の違い
ケータイでメール経由で文章をやりとりする、という文化は、かつての携帯電話の通話料の高さと、電車等の公共移動機関における通話の忌避から生じたと考えて良いでしょう。一方で、メールの特徴である、非同期的(つまり電話のように同時性を持つ必要が無い)コミュニケーションは、「時分の好きなときにメールを読むことができる」という点を実現しています。
メールは、リアルタイムでの用件を伝達する行為のタイムシフトを可能にしたということでもある訳ですが、ケータイのメールのように文字を中心とした、ほぼリアルタイムでの、移動体通信を用いたパーソナルコミュニケーションは、過去の時代に類を見ないものです(それ以前はポケベルと公衆電話による文字通信なんていうものもありましたが、ここでは無視します)。このような特徴から、ケータイでのメールは、既に電話番号やメールアドレスがやり取りされている間柄での、パーソナルなやり取りに終始することがほとんどです。
さて、実際に携帯電話でメールを利用とする場合、無視できない(または過去においては無視できなかった)点はパケット料金でしょう。メール受信に一通幾らかかる、という料金体系では、記述される内容を短縮し、相手にパケット料金の負担をかけないようにすることがマナーでした。また、携帯電話は液晶画面がPCのそれと比較すると圧倒的に狭いことも特徴としてあげられます。このような画面では、文中に改行を入れると読みづらいため、ケータイのメールでは、改行が行われることが希です。さらに、ケータイはキーボードが貧弱でそもそも長文が打ちづらい面もあります。
ほかにもいくつか特徴がありますが、まとめてみると、ケータイでのメールには、以下の様な特徴があることがわかります。
- 個人的なやり取り(電話帳に登録している人がほとんどなので、名乗ったりする必然性も無い)
- 短い文章(ケータイの小さい画面で長文を読むことに無理がある。パケット代も馬鹿にならない)
- 絵文字が多用される(ただし、同キャリア間に限る)
- プッシュ式媒体(勝手にメールが手元に送られてくる)
その他の参考資料
これらの特徴は全てケータイ文化とでもいえるものです。みなさんがPCでメールを利用する際には、このケータイのメールの作法のことは全て忘れて下さい。先ほどもいいましたが、PCでのメールは、はがきでの連絡に近いものだと考えてください。では具体的にPCではどのようにメールを書けば良いのでしょう。
文化は形式を重視する
PCでのメールの文化だけではなく、一般的に伝統や文化といったものでは、過去から引き継がれて来た、様々な形式が重視されます。PCでメールを書く際には、過去に積み上げて来た「手紙」という文化が色濃く影響を及ぼしていることに自覚的である必要があります。極端な話、PCでのメールを書く場合に、手紙と同様の文面を用いたとしても問題ありません。しかし、現代では、メールはかなり略式のものになっていると考えてよいでしょう。しかし、重要な点は余り変わっていません。
社会人として礼節あるメールを書きましょう
社会では、一日に100通、200通のメールを受け取っている人も希ではありません。このような世界では、いい加減なメールを書いていると、それだけで扱いが低くなります。自らのプライオリティを自ら下げるような、くだらないことをする必要はどこにもありません。とにかくインターネットでの標準的なメール文化に慣れ、その文化に溶け込むように努力する必要があります。しかし、そう難しいものではありません、以下のようなところに注意するだけです。
サブジェクト(件名)はそのメールを代表していますか?
メールで一番大事な点は、もちろんその用件自体の内容に決まっていますが、次に大事な点は件名かもしれません。受け取ったばかりのメールを読むかどうかは件名に依存するといっても過言ではありません。
あなたはどこの誰ですか?
メールの最初に名乗りましょう。
相手に見える部分は可能な限り奇麗に整える
日本語で書かれたPCでのメールは1行30〜35字で手動で改行をおこなう必要があります。
これはメールの返信の際の引用に関わる部分です。
こんばんは、担当講師の佐々木です。
このメールはテストのメールです。
残念ながら自動的に改行してくれているように見えても、届いた人の環境でどのように見えているかは保証の限りではありません。きちんと自分で改行してください。
返信の際に気をつけねばならないこと
基本的には、必要な部分だけ残してコメントをします。これはインラインで返信すると呼ばれる方法です。この方法では、話される内容の方向性を限定することができます。ただし、ビジネスの場合には「言った、言わない」で論争になる場合があるので、全文引用する場合もあります。最近ではこの方法がメジャーになってきたようですが、容量が余計かかりますので、使用場面を考慮する必要があります。
書いてすぐに送るものではない
特に急ぎの用件でない限り、もう一度見直す余裕が欲しいものです。時間がなくても一度は必ず読み返すようにしてください。誤変換などで相手の苗字が違っている場合などもあります。たとえば過去のメールの本文をコピーして用いる場合など(ビジネス場面などではよくあることです)では、特に細心の注意を払わないと、致命的な間違いが含まれている可能性すらあります。
メールと著作権
皆さんが記したメールは、皆さんの著作物です。したがって、それを受け取った人が許可を得ずに勝手に第三者に公開することはマナー違反です。自分の書いたものが許可もとられずに、勝手に一人歩きするとすれば、それは気持ち悪い話ですし、マナーとしてもそれはなっていない、と思うのではないでしょうか。
なお、なぜ「メールには著作権があり、無断転載はしてはならない」と断定しないかというと、以下のような理由からです。
上の判例では、手紙が「著作権法第二条1で定める「著作権物」ではない」という判断がなされており、下の判例では、著作権物である、という判例が出ています。つまり、手紙やメールを著作物に含めるかどうかは、ケースバイケースである、といえます。ただし、逆にいえば、あらゆるメールは著作権物である可能性がありますので、取り扱いに注意が必要ということになります。
また、国によって著作権の概念が異なりますので、以下のような判例が出ている国もあります。
ともかく、日本国内では「メールも著作物に含まれる場合がある」のは確かですので、取り扱いには細心の注意を払うようにしてください。
メール配送のしくみ
メールの配送の仕組みを理解するには、「ドメイン」という仕組みに対する理解と、インターネットを構成しているさまざまな「サーバ」と呼ばれるコンピュータの役割についての理解が必要になります。
ネットワークサービス基礎
今回の講義では、メールに関する様々な話題を巡ってお話をしてきましたが、このネットワークサービス基礎では、Googleの提供している、Gmailを紹介します。Gmailは、現在無料で利用することのできるネットワークサービスの中でも特筆すべきサービスです。大容量のメール領域と、Google由来の検索性が特徴のフリーのウェブメールサービスです。Gmailはメールの保存容量の上限が2005年の4月1日には、2GBに上限が増加するとともに、利用者の利用状況に応じて上限がアップするシステムになりました(事実筆者は現在771MB利用していますが、上限が2703MBにまで増加されています)。この容量は、事実上無制限に利用できる容量です。(メール一通あたりの上限は10MBで、これを超えている場合は送り主に送り返されます)。ウェブメールなので、機能はブラウザによって微妙に異なりますが、次第に対応ブラウザも拡張されています。
Gmailは、「Gmail」から登録することで、誰でも無料で利用できます。
Gmailはメールをいちいち捨てる必要が無いほどの容量が用意されています。従って、メールを整理したり、容量を気にして捨てたりする必要はありません。バックアップもGoogleがやってくれているので、ユーザはメールの管理について、ほとんど気にする必要はありません。ただし少し癖があります。まず一般的なメールソフトのように、フォルダ分けによる整理はできません(ただし、20種類のフィルタを設定することができ、メールにラベルづけをすることもできます)。必要なメールは、必要なときに検索をする、というポリシーで利用します。Google譲りの検索エンジンを利用していますので、すぐに必要なメールを探し出すことが出来ます。また、ウェブメールなので、複数のメールを見比べるといったことも苦手です(別ウィンドウに表示するという機能がありますが)。しかし、現在サービスされているどのフリーメールサービスよりも使い勝手が良く、また今後もサービスが良くなるであろうことが予想されるのがGmailなのです。ぜひいち早くGmailを体験してください。
特に大学環境などでは、メールの保存容量が足りなくなることも多いですし、また卒業後に継続して利用するにも不具合が多いため、ぜひ外部にメールアドレスを持っておき、そこに全てのメールを転送するという仕組みを作っておいた方が安全だと思います。
参考文献
「手紙を書く」という行為は、インターネットがこれだけ普及した時代においても、未だに有効なコミュニケーション手段です。少なくとも社会人としてきちんとした手紙を書けるように参考書を持っておくと良いでしょう。
2007年度版 就職活動 手紙の書き方・電話のかけ方 (就職バックアップシリーズ)
- 作者: 就職情報研究会
- 出版社/メーカー: 実務教育出版
- 発売日: 2005/09/15
- メディア: 単行本
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ケータイに関する参考文献として、以下の書籍をあげておきます。個人で購入するにはちょっと高価かもしれませんね。このような高価な書籍を利用するためには、図書館を活用するのが良いと思います。図書館の活用に関しては、次回の講義で扱います。
- 作者: モバイル・コンテンツ・フォーラム
- 出版社/メーカー: インプレス
- 発売日: 2005/12/07
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この授業とはまた別方向ではありますが、とてもためになる本を紹介しておきます。
- 作者: 伊東乾
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2006/03/23
- メディア: 単行本
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特にこの書籍のレッスン4「一通のメールが明暗を分ける」という章については、全大学生が必読だと思います。参考にしてください。
課題
各人にメールで送ります。