第11回 - 07年度春学期

ワードプロセッサを利用する

レポートを書く、手紙を書く、様々な目的のためにワードプロセッサが利用されています。ワードプロセッサはとても身近なソフトウェアです。

なぜ文章を書くのにワープロを使うのか?

文章を書くには、通常、「エディタ」と呼ばれるソフトウェアを利用した方が効率的です。エディタは、文章を「書く」ことに特化したソフトウェアだからです。また、ラフなアイディアをまとめあげてくには、手書きの方が適しています。従って、ただ文章を書くだけならば、ワードプロセッサよりも良い手段が存在します。

しかし、文書をワードプロセッサを利用して書く場面が多いのはなぜでしょうか? 結論からいうと、ワードプロセッサは、文書を視覚的デザインするためのソフトウェアだからだ、といえます。つまりワードプロセッサは「印刷される文書を作成することを目的にした」ソフトウェアなのです。

ワードプロセッサを利用して書かれた文書は、基本的に印刷されることが前提となります。

「なんだそんな当たり前のことか」

と思う人も多いかもしれません。しかし現代においては、次第に印刷されないまま流通している文書の割合が増えています。メールもそうですし、Webも同様です。印刷されることを前提とした文書の割合は年々減っているともいえるかもしれません。その中でわざわざ印刷しなくてはならない文書を作成するのですから、その見栄えにこだわるのは必然的なことでしょう。

ワードプロセッサには複数の役割がある

とはいえ、実際にはワードプロセッサには複数の役割を与えられているといって良いでしょう。簡単にまとめると、

  • アイディアプロセッサ
  • エディタ
  • DTPソフトウェア

の3種類です。もちろんこれらは専用のソフトウェアを用意することもできますし、一部を鉛筆と紙で行うこともできます。DTPソフトウェアには、商業印刷に利用するようなものもあれば、チラシのような1ページものの印刷物によっては、ドローソフトと呼ばれるソフトウェアに任せる場合もあります。

Microsoft Wordなどの、多機能ワードプロセッサは、3種類の役割を1つで行おうとしていると考えても良いでしょう。さらには図を描く、表を作成する、などの機能も含まれています。これらのすべての機能は、「見栄えの良い印刷物を作成する」という目的のために用意されています。

必ず身に付けるべきワードプロセッサの作法

多機能ワードプロセッサには、ごく一部の人にしか必要のない機能も多く含まれています。はじめて多機能ワードプロセッサに触れる人にとっては、どんな機能か想像もつかないものが多く、それだけで怖じ気づいてしまうことも稀ではありません。さらに実際に利用している際にも、それらの機能が無駄なだけではなく、邪魔になったりすることも多いのが実情です。

ここでは利用者が最低限身につけておくべきワードプロセッサの機能を列挙し、それらを上手に活用しつつ見栄えの良い文書を作成する方法を紹介します。

まず、ほとんどのワードプロセッサに搭載されている。基本的な機能を列挙します。

  • 書類全体に関する設定
    • 判型の設定、印刷範囲等のマージン設定、ヘッダとフッタの設定
  • 段落に関する設定
    • 行揃え設定、行間サイズ変更、インデント、一行目インデント
  • フォント回りの設定
    • フォント変更、サイズ変更、カラー変更
  • グラフィック等のインポート機能

これらの機能でほとんどの文書を作成することができます。利用する機能がそう多くはないのがわかると思います。

レポートを作成する

ここからは、ワードプロセッサでレポート課題を作成するための手続きについて記します。ワードプロセッサを使う場面以外にも、レポートを作成するためには、いくつもの手続きがあります。それらの手続きも見ながらより良いレポートを書くにはどうしたらよいかを見ていきたいと思います。

ワープロを使う前に紙を使おう

レポートを書く場合、ワードプロセッサをいきなり使って文章を書きはじめるよりも、先にアイディアをまとめるという作業を行うことが大事です。慣れている人であればワードプロセッサ上ですべての作業を完結できるかもしれませんが、一般的にアイディア出しの段階ではコンピュータの画面を見つめているよりは、紙を使って構想を練る方がうまくいくことが多いようです。

紙にざっくりとアイディアを出すという手続きは、レポートの全体像を把握するための手続きでもあります。この段階では細かいところまでは見えていないはずですので、気づいたことをどんどん紙に書き込んでいきます。連想されることも含めて書き込みましょう。利用する紙のサイズはA4判以上の大きさが良いでしょう。A3判を利用する人もいます。ラフなアイディア出しですので、比較的大きめの字で書き込むと良いでしょう。太いサインペンや濃い鉛筆、カラーのペンを利用しても結構です。レポートで扱うトピックから連想されることを、どんどん書き入れてください。
アイディアを頭から吐き出すという作業は、アイディアを整理するということと同義です。この作業をしている間に、自分の知識で足りない部分がどこか、ということがだんだんわかってきます。紙の端に、何を調べないといけないかをリストアップしておくと良いでしょう。この時に走り書きで良いのでメモをするようにしてください。でないと絶対忘れます。その際に、「××のために△△を調べる」、「○○を調べるために△△を読む」というように、目的をきちんと書いた方がより効果が高くなります。ここまでの手続きをラフを作成する、ということにします。

ラフを清書しましょう

「このレポートに関してはこれだけはやらなきゃいけない」ということが、おそらく10項目以上出てくると思います(出てこなかったらもっと時間を取って真剣に考えましょう)。その中から今回のレポートにはどんな要素を使うかということを判断する必要があります。どういう方向で書くのかがここで決定されます。自分の意見はどうであるか、ということもこの段階で確定します。自分は、どの立場でどんなことを主張したいのか、その立場と同じ立場の人は、過去にどんな人がいて、どんなことを主張していたのか。現時点では、まだ調べきれていないことがたくさんあります。そこは全て空白にしておいても良いでしょう。しかし、自分がどういう方向で論じたいか、ということは書き入れておきます。

ラフを清書すると、自分が次に何をしなくてはいけないかが明確になります。図書館で資料を集めるのか、オンライン書店で本を注文するのか、それともWebで検索しないといけないのか、文書として何かを書く際に、どこから始めると良いか、という部分も見えてくるでしょう。

もちろん本を読んだり、資料を集めたりしているうちに、この設計図を修正したくなることもあるでしょう。しかし、この作業を行った後でなら、「こう修正しよう」と見通しを立てることができます。レポートを書くという作業は、いきあたりばったりではできません。見通しの良い設計図を描くことがまず第一なのです。

調査を行い、設計図に反映する

次の手続きは、資料を入手し、それらの記述を参考にしつつ、自分のレポートの方向性を模索するというものです。情報を集めなければ、ここから先は一歩も進めない状態のはずです。情報収集の方法については、別項目を参照してください。

きちんと資料に当たれば、ほとんどの場合、自分だけでは思いもつかなかった考え方や、新しい資料、参考となるデータなどが入手できます。そこで設計図の見直しを行います。資料によっては自分の考えていたことと正反対のデータもあるでしょう。もしも自分が考えていたことが全くの間違いであった場合は、素直にラフを清書するところまで戻っても良いでしょう。考えられること全てはラフを作成する段階で出しているはずですので、今回の作業はそう時間がとられることもありません。

ここまでの手続きで、やっと書こうとしているレポートの設計図が完成したことになります。

ある程度まで資料を集め、全体的な方向性を固めたら、それ以上は資料を探し続けるのは時間の無駄です。集めた資料を活用する方向で頭を切り替えましょう。

資料から必要な記述を抜き書きする

調べ上げた資料のほとんどは「引用」という形で活用されます。「引用文献の多い論文は良い論文である」という意見もあります。従って、利用しようとする全ての資料から、必要な記述を抜き出す必要があります。必要な資料を抜き書きするためには、その資料をきちんと読み込む必要があり、文脈に沿ったかたちでの利用をする必要があります。また、引用した資料は、必ず引用文献として明記する必要があります。でないと盗用、剽窃、ということになってしまいます。なお、引用の書式については別項目を立てて説明します。

資料の整理は、まず収集した資料から引用できそうな部分をコピーしておきます。
その引用がレポートのどの部分で利用できるかを考えます。自分にとってその資料はどのような立場でしょうか? 近い立場ですか? それとも反対意見ですか? 専門とは別の分野から収集された資料もしれませんね。それらの資料がどのように積み重ねられるかによって、レポートの議論の進め方が変わります。

皆さんには既に設計図があるのですから、そこにパズルを組み立てるように資料を適切にハメこんでいってください。資料はみなさんの主張に力を添えてくれる武器であると同時に、批判をかわすための楯でもあります。ぜひ資料は集められるだけ集めてください。

実際に記述する

それではレポートを実際に書き始めることにしましょう。レポートや報告書には(主に歴史的経緯によって)様々な書式があります。従って、それぞれに適した書式を選ぶ必要があります。個々の書式に関してはこの解説では扱いません。しかし、一般的に重要と思われる点について記しておきます。

目的と結論を明確に

まず、レポートで一番大事なことは「目的」と「結論」です。そのレポートはどんな目的のために書かれ、どのような結論が語られるのか、という点が読者にとって一番大事な点です(そうでなければ興味も持ってもらえません)。しかもこの目的と結論は簡潔に記すことができる必要があります。

このレポートではこのような目的に関してこのような結論を得た

このように一言でいいあらわすことができるようになって、初めてレポートをきちんと書き始められると思ってください(特に実験レポートや調査レポートではこのように一言で表現できることは極めて重要です)。

方法は第三者が追試できるように書く

もし実験や調査を行った場合には、その実験や調査の手続きをきちんと明文化する必要があります。

結果は客観的に書く

結果はレポートの中でも客観的であることを重要視される部分です。「結果・考察」とまとめられる場合もありますが、客観と主観の分離をきちんとするためにも、結果と考察は別項目として立てた方が良いでしょう。

考察は目的に応じて書く

考察はレポートの筆者がその主観を交えることのできる唯一の機会です(もちろん目的となるテーマを選んだの時点で十分主観が入っているのですが)。結論を解釈する、今後の予測を立てるなど、様々な方向に話を広げることができます。しかし、いくら主観を交えても良いといっても、「ただそんな気がするから」というようなあいまいな根拠では、何も主張することはできません。従って、ここで集めた資料を活用することになります。「ほらね、こういうことを言ってる人がいるから、こんなことが言えるでしょ?」というように利用するのです。

結論は短くまとめる

あれもこれもとぐだぐだと書くのではなく、ざっくりとまとめることが大事です。要するにこのレポートで伝えたいことはどういうことだったのか、という点が結論になります。

引用の記述

この講義で何度も繰り返されているように、他者の著作物を利用する際には、引用という方法で適切な利用をおこなう必要があります。基本的に文書の最後に引用文献のリストを添付するようにしてください。また、書類を作成する際に参考にした書籍や文書があれば、参考文献という形で掲示するのも良いでしょう(場合によっては参考文献の掲示が必須となる場合もありますので、参考となる文書リストは常に最新の状態に保っておくと良いでしょう)。



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参考文献

課題

各人が作成した全てのWebの評価をおこない、相互評価課題を提出すること。